あなたの生きる力を引き出す「がん治療」

がん光免疫療法

がん光免疫療法は、がん細胞に特定の光に反応する物質(光感作物質)を事前投与し、これに反応する特定の光(低レベルレーザー)を照射すると、その光を吸収し光感受性物質が活性酸素を発生させて、がん細胞を選択的に破壊する副作用の少ない治療法です。
一般的にはPDT(光線力学的治療)と呼ばれ、一部のがんに対する治療として保険承認されてきました。近年ではIR-700とEGFR抗体を用いた新たな光免疫療法が日本で切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌に対して、2020年に条件付早期承認されるなど、近年注目されるがんの先進治療の一つです。
さらに、がん光免疫療法では、レーザー照射で破壊したがん細胞より、がん細胞由来の抗原が体内に放出され、自身の免疫細胞がそれを認識します。がん細胞に対する免疫を活性化し、治療部位のみでなく全身の転移巣にも治療効果を与えていく治療法でもあります。
当院では併せてSDT(超音波力学的療法)を併用することで様々ながん種に対応できるよう治療を行っております。もちろん、放射線治療や抗がん剤治療などとの併用治療、標準治療の適応がない末期がん(ステージⅣ)患者様の治療にも積極的な適応が可能です。

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光感受性物質とは

特定の光を当てると、光感作物質はエネルギーが高い状態となります(光反応)。この際、光感受性物質がエネルギーを放出して本来のエネルギーが低い状態に戻る際に、活性酸素を放出します。活性酸素は、がん細胞を破壊しますが、正常細胞は「オキシダーゼ」という抗酸化酵素の働きで活性酸素を無毒化するので破壊されません。
当院では光感受性物質としてインドシアニングリーン(ICG)を使用しております。ICGは副作用の少ない生体蛍光物質として、肝機能検査や眼底造影検査など、広く検査用薬として臨床にて用いられており、安全性の高い光感作物質として知られています。

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がん光免疫療法に使用されるレーザー光とは

がん光免疫療法で使用されるレーザー光の照射は、マルチレーザーディバイスシステム(MLDS)によって行われます。MLDSは、静脈内・間質内・関節内・光線力学療法(PDT)のための世界で初めて承認されたシステムです。EU(CEマーキング)やFDAの承認医療機器として認められています。

がん光免疫療法では、光感受性物質をがん細胞に選択的に集積させた上でレーザー光をがん細胞に照射します。照射されるレーザー光は、光感受性物質が集積した細胞のみに効果をもたらすので、光感受性物質が集積していない正常細胞を傷つけることはありません。

がん細胞に光感受性物質を届ける仕組み

がん細胞に目的物質を効率的に届ける「運び屋」ハイブリッドベクター

がん光免疫療法では、光感作物質を効率的にがん細胞に運ぶ必要があります。これを可能にするため、特殊なベクター(運び屋)を使用します。当院で使用するベクターは、医薬品や化粧品において広く応用されているリポソーム(脂質の二重膜からなるカプセル)を基本構造としています。リポソームに微量の界面活性剤(ミセル)を合わせて作られたのがハイブリッドベクターです。
がん細胞の細胞膜は、正常細胞に比べより流動的という特徴があります。その流動性の違いからハイブリットベクターは、がん細胞の細胞膜に優先的に蓄積します。蓄積したハイブリッドベクターは、がん細胞の細胞核の中の断片化することで、アポトーシス(細胞の自死)を誘導します。

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がん細胞が作り出した新生血管の隙間からがん細胞にのみ集積する仕組み、EPR効果。

がん光免疫療法では、より効率的にがん細胞に光感受性物質を届けるために「EPR効果」を利用します。
がん細胞は酸素・栄養を取り込み成長するために血管を新生させます。この新生血管は不完全であり、血管内皮細胞の間に200nm程度の隙間が存在します。正常な細胞の周囲の隙間は6~7nm程度であるため、数百nmのナノ粒子は正常な組織には取り込まれず、腫瘍の組織の中に蓄積します。
また、腫瘍ではリンパ組織も発達しておらず、組織中の異物を排除できずこれらのナノ粒子は腫瘍組織中に貯留します。また、漏れ出した薬剤等は再び 血管内に戻りにくくなっています。
このような特性のことをEPR効果といい、抗がん剤のような低分子の薬剤や遺伝子などを、がん細胞に効率的に運ぶDDS(ドラッグデリバリーシステム)として利用されております。これは、ノーベル賞の候補にもなった前田浩博士(熊本大学名誉教授)による技術です。
がん光免疫療法では、選択的にかつ効率的に光感受性物質をがん細胞に届けるためにこのEPR効果を利用した技術を用いています。

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光免疫療法のもう一つの特徴・免疫の活性による抗がん効果

がん光免疫療法の特徴は、ICGが集積したがん細胞だけを選択的に狙い撃ちすることができることです。レーザー光により破壊されたがん細胞からは、細胞内の物質が細胞外へ放出されますが、近接する免疫細胞がこれを目印(抗原)として認識して、本人のがん細胞に対する免疫機能が活性化することができます。
放射線治療の世界では局所治療であるはずの放射線治療を行ったとき稀に、別の場所にあるがん細胞が縮小するなどの報告があります。これはアブスコパル効果と呼ばれ、機序となる免疫システムが報告されています。
光がん免疫療法では、近接する免疫系に影響を与えることなく、がん細胞だけを破壊するので、免疫の機能を損なうことなく抗原(免疫細胞が相手を認識するための目印となる物質)を提供することができる点が優れており、免疫機能の活性化による高い抗がん効果を期待することができます。

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~光免疫療法の治療の流れ~

がん光免疫療法では、まず初日にICGを搭載したリポソーム(ハイブリッドベクター)を点滴にて投与します。点滴は、およそ30分程度で終わります。翌日、ターゲットとするがんの場所を超音波(エコー)などで確認しながら、直接レーザーを照射します。静脈内、間質内、関節内、さらに外部からの照射が可能で、適切な照射方法を医師が判断し治療を行います。ICG投与後、24時間から48時間が最も効果が得やすいとされており、これを目安に二日目の照射日が決定されます。照射はおよそ1時間程度で終わります。光がん免疫療法は標準治療との併用が可能です。他の治療のスケジュールや、患者様の状態を考慮し決定いたします。

カウンセリング

医師が状態を診断し、治療の内容について詳しくご説明いたします。

治療前の検査

治療を受けられるかどうか判断するため、検査採血を行います。

光感受性物質の投与(1日目 約30分)

リポソーム加工した光感作物質を点滴投与します。

レーザー光照射(2日目 約1時間)

血管内にファイバーを通し、レーザー光を照射します。

治療効果の評価

1セット治療の終了後に、治療効果を評価します。

がん治療ホットライン 0120-232-255