ボケもがんもなく、100歳を超えても元気に自立して暮らしている人たちを「百寿者」といいます。この百寿者についてさまざまな調査結果からわかること。それは百寿者は老化のスピードが遅いわけでは決してなく、心も身体もすべてが均質に加齢していてバランスがよく、弱点が少ないということです。
老化には年齢とともに正常に老化していく避けがたい老化と、老化の危険因子によってもたらされる病的な老化があります。今現在の私たちの体は、その正常な老化と病的な老化が合わさった状態です。
アンチエイジングはこの病的な老化を治療し、できるだけ正常な老化に近づけていくことを最終的な目標にしています。
この病的な老化を助長してしまうもっとも大きな危険因子のひとつが糖化なのです。
これは、上の図にあるように加齢に伴って促進する病態である、糖尿病合併症、動脈硬化、アルツハイマーいずれにも糖化が関与しています。また現代日本において、2千万人ともいわれる糖尿病予備軍の数からしても最大の危険因子といえます。
老化に関わる遺伝子をスイッチに例えると、人が老いるとは、そのオン/オフを切り替えていくプロセスだと言えます。
私たちの体には60兆個の細胞があり、その1つ1つに数千個の遺伝子が組み込まれています。遺伝子とひとまとめに言っても、老化を促進する遺伝子もあれば、老化を抑制する遺伝子もありますので、すべての遺伝子が活発に働いている(=スイッチがオンである)ことが良いというわけではありません。糖化と酸化という反応は、まさに老化を促進する遺伝子のスイッチをオンにしてしまう現象と言えます。
具体例を1つ挙げてみます。
みなさん「コラーゲン」という名前はご存知だと思いますが、そのコラーゲンとは、私たちの体の中で、皮膚や血管、臓器などに最も広く存在しているタンパク質のことです。
年齢的に若いときには、そのコラーゲンを合成する酵素がどんどん分泌されるので、肌のハリやツヤを、いわゆる若々しい状態に保つことができています。年齢を重ねるごとに肌のハリやツヤが劣化してくるのは、この酵素の働きが弱くなってくるからです。
そういった正常な老化に加えて、糖化や酸化によって老化を促進する遺伝子のスイッチがオンにされてしまうと、コラーゲンの合成を妨げる酵素(コラゲナーゼ)が活性化されてしまうのです。
その結果、肌のハリツヤが低下することにつながってしまいます。
つまりアンチエイジングとは、正常な老化に関わる遺伝子のスイッチをオンにし、病的な老化に関わる遺伝子のスイッチをオフにするような生活習慣を身につけることとであり、できるだけ正常な老化に近づけ、できるだけ病気になりにくい体づくりを目指すことです。
人間の身体は様々な組織・器官・臓器からなっていますが、それぞれの老化のバランスが重要です。
この老化のバランスがどうなっているか?それを知るために考案したのが、「アンチエイジングドック」です。アンチエイジングドックでは、一般の検査項目に加えて、機能的年齢として骨年齢、筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢を評価します。
これらのうちでどこが一番の弱点なのかを見極め、それを早めに是正し、全体の調和をはかっていくための指導を行います。アンチエイジングとは機能年齢の老化予防であり、若返りといえるのです。