現在、日本人の三大死因の第1位は「がん」、第2位は「心臓病(心臓疾患)」、そして第3位には「脳卒中(脳血管疾患)」という3つの疾患です。
そのうちの心臓病と脳卒中が半数以上占めており、この2つの疾患は、いずれも動脈硬化が原因です。
例えるとするならば、チューブが血管だとすると、新しいチューブは表面もつややかでツルツルしていて、しかも伸縮性があり、水(血液)が漏れる心配もまったくありません。
しかし、使用せずに水も通さずに野ざらしにしたままにすればどうでしょう。やがて表面はひび割れ、伸縮性もなくなってしまい、さらにチューブの中にはホコリまで溜まって、最後には水が漏れたり、水が通らなくなってしまいます。つまり、この状態こそ動脈硬化です。
コレステロールには善玉の「HDL」と悪玉の「LDL」があることはご存知ですね。コレステロールは本来、細胞膜やホルモンの原料となる有益なものなのですが、コレステロールが動物性脂肪の摂りすぎなどで過剰になった上、中性脂肪も多い脂質異常症になると、コレステロールはどんどん悪玉化していきます。
この悪玉LDLが糖化されると糖化LDLに、酸化されると酸化LDLに変化します。これらは固まりやすく、非常に頑固なプラークとなって血管にこびりつくのです。
また、悪玉LDLを処理しようと集まってくるのが、マクロファージです。マクロファージは貪食細胞とも呼ばれ、異物を食い尽くすのが本来の仕事です。
しかし、食べるべき悪玉LDLが多すぎると食べきれずに破裂し、その残骸がプラークの一部となってさらに血管を狭くなってしまい、つまりやすくなります。このように動脈硬化は、酸化と糖化の両方の影響によるものだと解明されています。
血管の弾力を保つためにはコラーゲンは欠かせません。第8回「糖化と美肌」のところでお話ししたように、コラーゲンが糖化すると肌の弾力性が低下し、皮膚の老化につながってしまいます。また、コラーゲンが糖化していくと、それ自体が血管の内膜に蓄積して血管を詰まらせいってしまいます。
このように糖化は動脈硬化と密接につながっていることを覚えておいてください。
血管は全身に走っていることから、様々な体のトラブルを引きおこします。梗塞は腎臓でも起こりますし、意外なところでは眼にも影響があります。
動脈硬化によって網膜の血管が弱くなると、眼底出血を起こしやすくなるのです。さらに高血圧などの症状がある場合、糖化・酸化と相まって血管は余計にもろくなってしまいます。すると眼の動脈硬化はじわじわと進行し、突然症状があらわれます。
早い段階で治療を行い、出血が治まれば視力は回復しますが、出血がひかなかった場合などは、緑内障を併発したり、最悪なケースでは失明する恐れもあるのです。
一度硬化してしまった血管は完全にもとに戻すのはとても難しいことがわかっています。ですから動脈硬化は未然に予防するのが一番であり、糖化や酸化をしない工夫と努力が何より大事になるのです。