眼の水晶体に糖化の老廃物AGEsが溜まりやすいって本当ですか?眼の中の水晶体はほとんど新陳代謝(ターンオーバー)しないため、AGEsが蓄積されやすいのです。AGEsが発見されたのも実は、その最初の臓器は水晶体だったのです。
その水晶体にAGEs(糖化によって変性劣化したタンパク質)が過度に蓄積していくと白内障になるのではないか?こうした研究がいまは活発に研究されています。
過度の糖化によって発症する代表的な病気が糖尿病ですが、その糖尿病患者の50%近くが糖尿病性の網膜症です。したがって白内障と共に糖尿病性の網膜症が、眼科疾患において大きな割合を占めています。糖尿病の予備軍やその患者数の増加、さらに高齢化に伴い、白内障の患者数は今後も増加傾向にあると言わざるを得ません。
事実、日本の眼科手術の約半分を占めているのが白内障であり、すべての眼科手術の約50%(約80万件)。また、緑内障や加齢黄斑変性症のほか、失明原因の約50%を占めているのも白内障です。白内障の症状は50歳を過ぎると、ほとんどの人に見られますから代表的な老化現象のひとつに挙げられます。
なぜこのように白内障が多いのでしょうか?新陳代謝(ターンオーバー)の早い粘膜などは、すぐに新しい細胞に入れ替っていくため、AGEsが蓄積することはあまりありません。ところが、眼の中の水晶体は、入れ替わることがほとんどないため、AGEsが溜まりやすいのです。この水晶体こそがAGE化した蛋白質、つまりタンパク質が変性劣化したAGEsが発見された一番最初の臓器なのです。
加齢黄斑変性症は、欧米やオーストラリアなどでは成人の失明原因の第1位で珍しくない病気です。日本では比較的少ないと考えられていましたが、社会の高齢化と生活の欧米化により近年著しく増加しており、失明原因の第4位となっています。50歳以上の人の約1%にみられ、高齢になるほど多くみられます。
この加齢黄斑変性症は、これほど重要な眼疾患でありながら、発症のメカニズムは謎に包まれています。しかしながら、加齢黄斑変性症の初期段階では黄褐色の沈着物であるドルーゼンが網膜色素上皮に沈着します。そのことから、この黄褐色の沈着物がこの病気のメカニズムの解明に重要な役割を果たしていると考えられています。
そしてこのドルーゼンは数々のタンパク質が凝集して構成されているものであり、さらに言うとAGE化されたタンパク質の凝集物であることが最近の研究でわかってきたのです。
さらに、AGE化されたタンパク質はそれに隣接する網膜色素上皮細胞に作用して炎症性変化を血管新生作用を促進させることで、出血などの引き金にもなっているのです。
このように糖化は眼の疾患にも深く関わっているのです。