抗糖化コラム

糖化とがん

厚生労働省が発表した2011年(平成23年)の「人口動態統計の年間推移」によると、日本人で最も多い死因は、がん(悪性新生物)です。

死亡率1981年(昭和56年)以降から今日に至るまで死因の第1位は「がん」であり、およそ3人に1人ががんで亡くなる時代になったといわれるようになりました。1981年以前は「脳血管疾患」が死因1位であったことから、その推移と私たちの食生活の変化とには、なんらかの相関関係があるのではないでしょうか。日本人の食生活が変質して「塩分」の摂り過ぎから「糖分」の摂り過ぎへと変わっていったことも原因のひとつと考えられます。

私たちの身体には、毎日およそ5,000個ものがん細胞が発生しているといわれています。幸いにも通常は、白血球やNK細胞、マクロファージなど免疫細胞が協働して、ただちにがん細胞を取り除くという防衛システムが機能してくれています。ですから、毎日5,000戦5,000勝0敗という凄まじい戦いが、私たちの身体のまさにその身中で繰り広げられているといえます。

糖化とがんまた、私たちの身体を構成する60兆個もの細胞ひとつひとつに核があり、いわゆる核というカプセルの中にタンパク質の設計図など遺伝情報が収まっています。そして、その記憶媒体であるDNA(デオキシリボ核酸)が、ウイルスや活性酸素による酸化など様々なストレスによって傷つくとコピーミスを起こします。ほとんどのがんはこうしたコピーミスによる突然変異(がん化)によって発生してしまうのです。ですが、糖質を摂り過ぎずにバランスのよい料理で食卓を囲んだり、適度に運動をしてリラックスするなどストレスをためないよう心がければ、過度に心配する必要はありません。

一方、最近の研究で、がんを抑制する機能をもつ遺伝子の存在が明らかになっており、身体のなかで発生するがん細胞に打ち克つための”酵素”を作り出して、がんの増殖を未然に防いでくれたり(予防)、再発や転移というリスクにも対抗していることがわかってきました。

しかし、血糖値の急上昇を慢性的に繰り返したり、高血糖の状態を続けると、その”酵素”はタンパク質そのものですから、余分な糖と酵素が結びついて糖化を引き起こし、AGEs(蛋白糖化反応最終生成物)となってしまいます。結局、がん細胞を退治するという、その酵素がもつ本来の機能を失ってしまうのです。がん細胞を駆除してくれる酵素にとって一番の敵は「余分な糖」であり、「過剰な量の糖」ということになります。

私たちが生きるうえで糖化を引き起こさないようにすることはできません。しかし、そのリスクを下げる工夫はできます。もちろん「糖」は決して悪者ではなく生命活動に必要不可欠なエネルギー源でもあり、別ないい方をすれば大切な味方です。しかし、「余分な糖」、「過剰な量の糖」は決して甘いものではなく、味方にするかしないかはあなた次第といえます。がんをはじめとする生活習慣病のリスクを減らしていくには、糖化や酸化を減らす生活習慣を心がけることが大切です。